おすすめのTrados Plugin (1)
Tradosのメモリには言語の方向性(ソース言語→ターゲット言語)が定義されています。このため、日英翻訳をするときには日英用のメモリを、英日翻訳をするときには英日用のメモリを、という具合にユーザは言語の方向別にメモリを用意し分ける必要がありました。
一方、MultiTermの用語ベースにはこの言語の方向性がありません。用語ベースは2つはもちろん3つ以上の言語の間でも用語の対応づけができるよう定義されており、この点でTradosのメモリとは大きく設計思想が異なります。用語ベースをTradosに組み込むと、Traodsがソース言語とターゲット言語に合うよう必要な言語の組合せを用語ベースから抽出し、その方向まで適切に設定してくれます。このため、用語ベースを作成する際に、日英か英日かといった言語の方向をユーザが意識する必要はありません。
両者の設計思想が異なるため仕方がないのかもしれませんが、メモリでも用語ベースのように言語の方向性を意識しなくてすむようにできないものか、これはTradosを使い始めた時からずっと思っていたことでした。
この悩みを解決してくれるのが、SDL OpenExchangeに公開されている「SDL Trados Studio AnyTM Translation Provider」です。
これを使えば、英日翻訳をするときに言語の方向が逆の日英用メモリをそのまま使えるようになります。同様に、日英翻訳をするときに英日用のメモリをそのまま使えるようになります。つまり、メモリでも、用語ベースのように日英か英日という言語の方向を意識しなくてすむようになります。AnyTMをTradosに組み込めば、日英用のメモリと英日用のメモリの両方を用意し分ける必要がなくなり、英日・日英どちらの翻訳でも一方のメモリだけを参照し更新することが可能になるのです。
たとえば、英日翻訳をするときにAnyTMを介して日英用メモリAを参照(更新)するように設定しておけば、AnyTMがその日英用メモリAのソース言語とターゲット言語を逆にした英日用メモリA’(拡張子:.anytmreverse.sdltm)を裏で作成し、それをTradosに参照させるような仕掛けになっています。そして、翻訳中に英日用メモリA’が更新されると、AnyTMが自動的に元の日英用メモリAも更新してくれるため、ユーザは日英用メモリAのこと気にするだけですむわけです。
百聞は一見にしかずだと思いますので、詳しくはPaul Filkinさんによる解説動画をご覧ください。
Pluginに添付されている「ヘルプガイド」も参考になります。
動画やヘルプガイドからも分かる通り、2つ以上の言語が混在した原文をある言語に翻訳する際にもAnyTMは威力を発揮しますが(むしろそのために開発されたものなのでしょうが)、そういう場面でなくても、言語の方向性のない用語ベースライクな使い方をメモリにもたらしてくれるすばらしいPluginです。個人的にはこのAnyTMがNo.1で、Trados Studioに標準搭載されてもよいくらい出来の良いMust Pluginだと思っています。ぜひお試しください。
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