レバレッジ特許翻訳講座S1コース

   

結局、私は「レバレッジ特許翻訳講座S1コース」を1ヶ月半で離れました。理由は2つあります。

(1)当初の目的である「プロの特許翻訳者によるTradosを使った実作業の様子」を一例として見ることができたため、(2)日英特許翻訳に関する解説が自分としては物足りなかったため、です。

理由(1)については、「レバレッジ特許翻訳講座の受講開始から約1ヶ月半が経過しました」を参照していただきたいのですが、S1コースはTrados 2007のTagEditorとWorkBenchを前提に作成されているため、Trados Studio 2014ユーザである私は追加で情報収集し試行錯誤を繰り返す必要がありました。それがかえってTrados Studio 2014への理解を深め、結果的にTradosを中心にした独自の翻訳スキームをを確立することにもつながりましたので、当初の目的はS1コースによって十分達成することができたと思っています。

理由(2)については、講座案内を見てある程度予想はしていましたが、私が日英特許翻訳の3種の神器と考えている「MPEP」「Faber」「英文スタイルガイド(著名なもの)」(辞書や文法書は当たり前なので除外)を根拠にした解説が(少なくとも私が視聴した範囲では)全くなされていないということです。基本的には、私がこれまで目にしてきた多くの特許明細書の翻訳文とほぼ同レベルの英文明細書を教材にして、それに管理人さんのウェブ検索結果に基づく技術解説と電子辞書による用語の裏取りが補足される形で解説が進んでいきます。管理人さんが実際に作成された英文明細書を1つを丸ごとを見ることができれば講師の力量や出願後の経過なども分かりよかったのですが、誰が訳したものかも分からない誤訳を含んだ英文明細書から用語集やメモリ用の素材を大量に収集していくスタイルには私はなじめませんでした。もう少し質の高い英文明細書(できれば管理人さん作成の自信作)を使い、「MPEP」「Faber」「スタイルガイド」などに基づく英訳の解説があれば、通年コースへの移行を検討したかもしれません。この点については、個人的には、これらの資料に基づいて講師の良質な訳例を解説してくれる他の講座や書籍に分があるように思います。

まとめますと、Tradosおよび他の翻訳支援ツールを含む環境面の整え方を知りたい方、化学・物性系の発明を理解する上で必要な技術知識を得たい方、にとっては、レバレッジ特許翻訳講座から得るものは少なくないと思います。ただ、「配信ビデオ内等での著作物利用」や私は購入していない「翻訳メモリ(二次的著作物)の販売」も含めレバレッジ特許翻訳講座全体に言えることですが、特に他人の著作物を商用利用(他人の著作物を複製・譲渡・公衆送信可能化して集客・マネタイズ)しているわけですから、引用の全要件を満たさないデジタルコンテンツの利用については各著作権者から正式に許諾を得ており問題がないものであることをどこかにきちんと明記していただきたい(多少断片化されていても著作物の引用元は容易に特定できます)。Google画像検索で出てくる画像データも2ちゃんねるの投稿文も著作物フリーではありません。知的財産法・民法その他の法律に関わる立場(講師)であればこそ特に留意いただきたいところです(★参考:著作権法著作権侵害不法行為に基づく損害賠償(民法709条以下)特許電子図書館利用上のご案内「Copyright protection for
Translation Memories」
サンライズ:ファンの皆様へ)。また、事情をあまりご存じない受講生の方々に対して、事実と異なる知的財産部・弁理士批判(知財部は技術者の姥捨て山だとか、DBをたたいたり営業の電話をしているだけだとか、独立開業できない弁理士は云々とか)を垂れ流すのはぜひ止めていただきたい。もし仮にそういう例外的な特殊事例があったとしてもそれを一般化して吹聴するのは公平ではありません。事実優秀な方はたくさんいらっしゃいます。知的財産部・特許事務所は特許翻訳者にとってソースクライアントに当たる重要な存在ですからなおさら余計なバイアスは不要です。匿名を盾にした同業他社・講師批判や低俗なあおりも同様です。機械翻訳の技術が今後ますます発展していく中、特許翻訳業界に携わる人々が共存共栄できるよう互いを尊重し技術を磨き合うべきでしょう。マネタイズ優先でルールをなおざりにすると後で必ずしっぺ返しが来ます。そうなると、受講生にも不利益が及びかねません。以上の点が今後改善されれば、受講する側も安心して講座を購入できると思いますし、元受講生としてもお勧めしやすくなります。

一方、「MPEP」「Faber」「英文スタイルガイド」に裏付けられた日英翻訳のスキルを学びたい方には、他の講座や書籍を使うことをお勧めします。いくら技術のバックグラウンドがあり英語が得意であったとしても、これらに関する知識なしで実際の審査や訴訟に耐えうる英文明細書を作成するのは容易なことではありません。さらに、いわゆる3C(Correct, Clear, Concise)を自在に扱えるようにならなければ、納品物である英文明細書だけで他の翻訳者との差をつけるのは難しいでしょう。相手が誰であろうと翻訳文をチェックする側にその差がはっきり見えなければ、翻訳の依頼は安定しませんし単価アップも望めません。私自身、日々それを痛感しています。

 -Trados, Training, Translation

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